転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


406 ルルモアさんはいらないって言ってたよ



 ゴブリンからは素材が取れないでしょ?

 でもね、ゴブリンは素材が取れない代わりにやっつけると冒険者ギルドから報酬が出るんだって。 

 だからやっつけた数を冒険者ギルドに報告しないといけないんだけど、その時にどれだけやっつけたのかが解るようにって右っ側の耳を切り取って持って帰るそうなんだよ。

 右の耳は一匹に一個しかないから、それを持ってけば何匹やっつけたか解ってその分お金がもらえるんだってさ。

「ルディーン君。ゴブリンを倒す時は、これから頭ではなく体を狙おうな」

「は〜い!」

 僕ね、魔物をやっつける時にいっつも頭を狙ってるでしょ?

 今回も同じようにゴブリンの頭を撃ったんだけど、そしたらその耳がどっか行っちゃったみたいなんだよね。

 だから5匹やっつけたのに、耳はお姉さんがやっつけた1個しか取れなかったんだ。 

「後な、できたら俺がつくまで攻撃するのを待って欲しかったかな」

「なんで? だってお姉さんたち、大変だったんだよ」

「それはそうなんだけど……ほら、頼りなく見えるかもしれないけど一応俺は君の護衛だからな」

 僕、お姉さんたちが襲われてたもんだからすぐに魔法を撃ったでしょ?

 でももし一人で突っ込んでって僕がおケガをしてたら、ボルティモさんやバリアンさんたちがロルフさんに怒られちゃうんだって。

「そっか。ごめんなさい」

「ああ、解ってくれたらいいよ。実際、俺を待ってなかったおかげで助かったみたいだしな」

 そう言って冒険者のお姉さんたちを見るボルティモさん。

 さっき聞いたんだけど、僕が魔法を撃ってなかったらお姉さんはゴブリンたちに突っ込むつもりだったんだって。

 だからあの時にマジックミサイルでゴブリンが吹っ飛んだのを見て、お姉さんは何が起こったんだろうってすっごくびっくりしたそうなんだよ。

「いきなりゴブリンの頭が吹き飛んだと思ったら、その先には小さな子供がいるんだもの。そりゃあ、誰でも驚くでしょ?」

 お姉さんはね、さっきそう言って僕にもう一回ありがとうって言ってくれたんだよ。

「ただなぁ、危なかったそうだからルディーン君の判断は正しかったんだろうけど、できたら俺の見せ場も残しておいて欲しかった」

「そうなの?」

「あ〜、相手がゴブリンだからなぁ」

 ボルティモさんはね、今のパーティーの中では一番弱いけど、イーノックカウの中では強い方の冒険者さんなんだって。

 だからね、相手がゴブリンだったら10匹いたってみんなやっつけられたんだよって言うんだ。

「そっか。じゃあ、ボルティモさんがいたらもっと簡単にお姉さんたちを助けられたかもしれないんだね」

「ああ、そうなんだ。だからもう少しだけ待ってもらえてたら」

 ボルティモさんはさ、間に合ってたらゴブリン相手に無双ができたのになぁって思ってたみたい。

 でもね、

「うわさに聞く新緑の風のメンバーに選ばれるくらいなのだから、きっとそうなのでしょうね。でも私は”ルディーン君がすぐに攻撃してくれたからこそ”私も仲間たちも助かったのだと思っているんですけどね」

「そっ、そうですよね。勝手な事を言ってすみません」

 ホントだったらゴブリンたちに突っ込んでくつもりだった赤毛のお姉さんがすっごく怖い顔でにっこり笑いながら僕たちにそう言ったもんだから、ボルティモさんはすぐにごめんなさいしちゃった。



「さて、それじゃあリーダーたちのところに戻るか」

「待って、ボルティモさん。これ、そのまんまにしといていいの?」

 ゴブリンの耳は取ったし、そろそろみんなの所に戻ろっかってボルティモさんは言うんだよ?

 でもさ、ゴブリンの体はそのまんまなんだよね。

 だから僕、いいのかなぁ? って聞いてみたんだ。

 そしたら、ほんとはアンデッド化しないように埋めちゃうんだよって。

「だけど1匹2匹ならともかく、5匹もいると大変だろ? だからこんな時は一カ所にまとめて置いておくのが普通なんだ。そうすれば肉食の魔物が勝手に処理してくれるからな」

「でもでも、ほっとくとアンデッドになっちゃうかもしれないんでしょ? だったら、やっぱり埋めとこうよ」

 ゾンビとかのアンデッドはね、ゴブリンなんかよりずっと強いんだ。

 ここはお姉さんたちくらいの冒険者も来るようなとこだから、そんなとこでもしアンデッドになっちゃったら大変でしょ?

 だから僕、埋めとこうよって言ったんだよ。

 でもボルティモさんは反対みたい。

「だがなぁ、今から穴を掘るとなると大変だぞ。道具も持ってないし」

 普段はさ、こんな時の為に折りたためるスコップを持ってるんだって。

 でも僕がお姉さんたちを助けるために走り出しちゃったもんだから、荷物はみんなバリアンさんたちのとこなんだよね。

 だから掘ろうと思うとすっごく大変だよって言うんだ。 

「大丈夫だよ。魔法で穴掘っちゃうから」

「魔法で掘る? そんな事ができるのか?」

「うん、簡単だよ。魔法が使える人だったらみんなできるんじゃないかなぁ?」

 僕はそう言いながら体に魔力を循環させて、ディグの魔法を使ったんだ。

 この魔法はね、込める魔力次第で結構おっきい穴も掘れるもんだから、あっと言う間にゴブリンがみんな入っちゃうくらいの穴が開いたんだよね。

 それにあいた穴の分の土は消えずにその横に積みあがるから、埋めるのも楽ちんなんだよ。

「なるほど、これなら確かに大した手間もかからないな」

「そうでしょ」

 と言う訳でその穴にゴブリンを入れて埋めた後、僕たちはバリアンさんたちのとこに戻る事にしたんだ。


「やっと帰って来たか。それでエルシモ、後ろの3人が助けた冒険者か?」

「はい。とは言っても、俺がついた時には全部終わった後だったんですけどね」

 みんなのとこに着くと、バリアンさんがお姉さんたちの事を聞いてきたんだよね。

 だからボルティモさんが、あっちで何があったのかを全部説明してくれたんだ。

「なるほど、クラウンコッコの魔石で魔法を使ったのか」

「ええ。だから俺ではちょっと判断できなくて、バリアンさんにお任せしようかと」

「いや、それは流石に俺でも無理だろ」

 でもね、そしたら二人して難しい顔になってう〜んって唸りだしちゃった。

 でも、なんでだろう?

 ゴブリンはやっつけたし、お姉さんたちも元気いっぱいでめでたしめでたしだと思うんだけど?

「これに関しては、一度冒険者ギルドに戻ってギルドマスターと相談だな。お前たちもそれでいいな?」

「ええ。ギルドのルールは私たちもよく解ってますから」

 それなのに、バリアンさんがそう言うとお姉さんたちも困ったように笑いながらそれでいいよって言うんだ。

 だから僕、ボルティモさんに何でみんなそんな顔するの? って聞いたんだよ。

 そしたら、森の中で助けてもらった時はその分のお金を払わないとダメなんだよって。

「え〜、でもそれってお薬とかを使った時だけでしょ? 僕、お姉さんたちを魔法で治したよ」

「いや、魔法で治しても治療費は必要だろ?」

 前にルルモアさんが教えてくれたんだけど、お冒険者は薬を使って傷を治してもらったらそのお金を後で返さないとダメなんだって。

 これは町や村の中だったら魔法でもおんなじようにお金を払わないとダメなんだけど、それ以外だったらお金をもらわなくってもいいはずなんだよね。

 さっき僕がお姉さんたちを治したのはゴブリンをやっつけたとこだから、街ん中じゃないもん。

 だから大丈夫なはずなんだよね。

「へぇ、街の外なら魔法による治療代は払わなくてもいいのか」 

「うん! ルルモアさんがそう言ってたよ」

 その事を教えてあげると、ボルティモさんはそれなら大丈夫かもしれないなぁって言ったんだよ。

 でもね、バリアンさんはちょっと違うみたい。

「なるほど。それならもしかしたら大丈夫かもしれないが、流石に今回はなぁ」

「今回はなんか違うの?」

「ポーションを使うとその分の費用が掛かるだろ? だが魔法にはその費用が掛からないから、神殿や治療院に迷惑の掛からない街の外では対価を取らなくてもいいと言う事何だろうが……」

 僕、お姉さんたちの足をくっつけるのに魔石を触媒にしたでしょ?

 魔石も触媒にするとお薬みたいになくなっちゃうから、お金を払わないとダメかもしれないんだって。

「流石に俺もこんな場面に出会ったことが無いから、ギルドに戻って聞いてみないとはっきりしたことは言えないんだ」

 帝都やダンジョンがある街とかだと治癒魔法が使える冒険者がいるそうなんだけど、イーノックカウだとそれどころか魔法使いさえいないでしょ?

 バリアンさんにも、こんな時はどうなるのか解んないんだって。

「ポーションでさえ、使えばギルドカードにその記録が残るって言う話だ。多分この手の魔法も同じだろうから、職員は知らなくてもギルドマスターくらいは知っているだろう」

「そうですね。今回使った魔石はポーションなんかよりはるかに価値があるでしょうから、私たちとしてもうやむやにして後で問題になるほうが困ります。きちんと報告しましょう」

 と言う訳で、僕たちは錬金術ギルドにベニオウの実を持って帰る前に冒険者ギルドに行く事になったんだ。



 ルディーン君は魔法で治せばお金なんかいらないって思っていたようですが、どうやらそんな訳にはいかないようです。

 ついにルディーン君もなろう主人公らしくハーレムルートに!? なんて感想でも書かれてしまいましたが、流石にそんな事はありません。

 まぁ冒険者のお姉さんが言っている通りそのままうやむやにするなんて事はできないので、また大人たちの胃や頭が痛くなる事態にはなりそうですがw


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